…―外から中に入るのは簡単だった。



だが。


「お客様。どうかしましたか?」


受付の女の人が笑顔で問いかける。


私は…何が何だか分からずにいた。



だって初めてこんな高級なホテルに来たし、受付なんてもちろん近付いたこともない。


私は悩んだ据え、ようやく言葉を発した。




「えっと…“優作”っていう人ここに泊まってますか?」


暫くの沈黙…。


「苗字は何でしょうか?」


みょ…苗字?


聞いたことないです…。


「すみません…。」


私が悲しく謝ると、受付の人は困ったように焦り出した。


すると、男の従業員が受付に近付くと困り果てた私達に気付いた。

「どうしたの?」


受付の女性は訳を話すと、男の従業員は思い出したように頷いた。

「あぁ、神木さんじゃないか?」


「かみきさん…?」



「はい。僕、神木さんに頼まれてたんです。小さな女の子が来るから通しておいてって。」



…優作さん強引だなぁ。


従業員は、私を優作さんの部屋へと連れていってくれた。


優作さんの部屋は8階の1023号室。



従業員は一度インターホンを鳴らすが、優作は出てこなかった。


「おかしいなぁ?」


すると従業員は私にカードを預ける。


「神木様たぶん出掛けていると思いますので、勝手に入っていいと思いますよ。」


「はっ?」


従業員は私に鍵を渡すと、そのまま帰っていってしまった。



…ちょっと…それでいいの?


私は半分飽きれ気味で鍵を見つめた。