「彩芽、ばいばぁい!」


放課後になった途端、結衣ちゃんは走って帰っていった。


いつも一緒に帰っているが、塾があるとかなんとか…




私は首にマフラーを巻くと、教室をあとにした。


外に出ると、寒い風邪が素足を冷やした。


「寒っ!!」


鼻水をすすると、向こうに誰かが立っていた。


「お兄さん!?」


私はその姿を見ると一目散にお兄さんに駆け寄る。


「あ。彩芽ちゃん。」

「どうしてここにいるのっ?学校は?」


「今日は彩芽ちゃんと同じ昼までの授業だったから迎えにきたんだ。寒くない?平気?」


お兄さんは優しく微笑むと、手袋を私の手にはめた。


「あ、あり…ありがと。」


もう…緊張して噛んでしまう。


「嬉しい。ありがとうお兄さん!」


私が笑顔で言うと、お兄さんは驚いたように頷く。


「う、うん…。」


お兄さんは私の手を掴むと、前へと歩き出す。


手…っ手繋いじゃった!
私は赤くなる顔を上げる。


「あの…っお兄さん…」

「彩芽ちゃん。」



お兄さんは立ち止まると、私の方へと振り返る。


「その…僕のこと…“お兄さん”じゃなくて“唯斗”って呼んでくれる?」




照れたように私の顔を除き込む。

私はドキドキと心臓の音が高鳴るのを感じた。





「は…はい…。」


声に出すのが精一杯で……


たぶん変な顔をしていたと思う。