チェリー

「うん」

「…帰る時間に電話し、俺が迎えに行く」

「え、彼女さんは…」

「そんなんお前が気にすんな。今一番しっかりしてる奴に電話変われ」

そう言われて、まわりを見渡す。
酔ってなさそうなのは勇太くんかまぁくん。

ここは勇太くんやな。

「勇太くん、謙太郎ちゃんが変われって」

「俺?」

「うん」

勇太くんと謙太郎ちゃんは少ししゃべって、電話が私に戻って来る。

「帰る時に電話するんやで」

「分かった」

電話を切ってから、勇太くんの方を見る。

「詩織をよろしくって。ちゃんと見とけよ~って」

「…親やな」

秀ちゃんがボソッという。
まぁくんが困ったような顔をして秀ちゃんを見たあとに私を見た。

「心配してんのやで」

「うん」

「彼女より詩織ちゃん優先してくれるんやん?」

「うん」

「年やなくて、謙太郎くんはもっと別のこと気にしてると思うで」

「別…?」

「例えば…自分の詩織が誰かに取られたらどうしよう、とか」

「自分のって」

冗談のように返したけど、それがほんまやったらえぇなぁ~とか、心の中で思ったりする。