チェリー

「やから、お前、ここで断れ」

「え?」

「いいから。ここで和也に電話してや」

「なんで…?」

謙太郎ちゃんの顔は真っ赤で、何故か私もドキドキしていた。

「謙太郎ちゃん、なんで?」

「お前は、俺のやろ。何、和也に告られとんねん」

「でも…」

俺のって何?
妹って事?

謙太郎ちゃん、不器用なのは知ってるけど言葉が足らないよ?

「おい、詩織?」

「謙太郎ちゃんの馬鹿」

「は?」

「私、謙太郎ちゃんが好きだよ。だから和くんは断るよ?だけど…私、謙太郎ちゃんの何?」

「え、」

謙太郎ちゃんは戸惑うような顔をする。
私はその隙に、謙太郎ちゃんの部屋から走って逃げた。

なんで、こんなに謙太郎ちゃんが好きなんだろう。

気が付いたら好きだった。

生まれてから今までずっと謙太郎ちゃんにしかこの感情を持ったことがない。


走っている時、電話が鳴って立ち止まる。

「もしも…」

「え、詩織ちゃん…泣いてる?」

「和くん…」

「今どこ?」

「謙太郎ちゃん家の近くのコンビニ」

「なら、そこおって」

「え?」

電話は切られ、私はコンビニに入る。