チェリー

歩いてスーパーに行く途中で、タラスパに決定した。



和くんは、優しい。

皆も優しいけど、和くんの優しさは、私だけに優しい…そんな気分にさせてくれる。

「なぁ」

「ん~?」

真剣に買い物をする和くんに声をかける。

「和くんはタラスパの作り方知ってるん?」

「え、詩織作れるんとちゃうん?」

「タラスパは…」

「え~…」

結局、パスタの上にミートソースをかける一番王道のスパゲティになった。

帰りに、和くんの行きつけのパン屋でフランスパンを買って、家路につく。



「邪魔」

「え?」

「邪魔するんなら、あっち行っといてや」

「でも…」

「ウザイ」

和くんは麺を茹でている間、暇なのかミートソースをゆっくりと混ぜる私のまわりをウロチョロとする。

「ほら、あと5分は暇やで」

「そうやけど」

「和くんも私が作って自分は食べるだけのが楽やろ?」

「う~ん…」

無理矢理説得して、和くんをキッチンから出て行かせる。

時計を見れば、六時過ぎ。
九時までには帰れそうだし、謙太郎ちゃんを心配させることもなさそうだ。

「むっちゃ上手い」

「ほんまに?」

「おん」