「正直、悔しくてさ。 人事課に掛けあう代わりに、1回食事に付き合えって言ったんだ。断られると思ったら、OKしたよ。 ……ったく、どんだけ惚れられてるんだよ、お前。」





「はっ? 俺に…惚れ…て?…」




「お前を希望の部署に行かせるために、許せない男と食事に行くんだ。 あの頑固な香織がそこまでやるのは、相当のことだよ。」




「だけど… 俺には、私じゃない、別の人と人生を歩んで欲しいって。 自分じゃない方がいいんだって。」




「歳のこととか、気にしてんじゃないのか? あいつ、自己評価が低すぎるからなぁ…。 昔も今も、いい女なのに。」






その時、遠くから上野さんを呼ぶ声がした。



振り返って手を上げ、俺の方をもう1度見た。