部屋に一歩入り、立ち止まる。 「ねえ、琴ちゃんて、佑斗がヤクザの息子だって知ってるの?」 佑斗の顔を見れなくて、前を向いたまま話した。 「知ってるよ。ガキの頃に、唯一オレを偏見の目で見なかったのが、琴だったんだよ」 そうなんだ…。 だから、好きな女の子だったんだね。 「それで、手作りクッキーを貰ったんだ?」 「えっ?あ、ああ。あれは、バレンタインの時だったんだけどな」