「…ごめんな。」
大和はあたしに言った。
何に対して《ごめん》なのかはわからなかったけど、
「いいの…」
あたしはそう答えた。
大和の胸にあたしの耳をあて、懐かしい鼓動を再確認する。
「…ドキドキが早いよ?」
「…あぁ。まさか夕葵がここにいるなんて思わなかったから…」
「…あたしも。」
「…大人っぽくなったな。」
「…そう?」
「見てビックリした…
ますます綺麗になってるから…」
「……」
「…でも。俺は教師だから…」
チクリと心が痛む。
「さっきキスしたくせに…」
「…だよな。俺、教師なのに…ダメだな…」
「あたしは…大和が…」
顔をあげて大和を見ると、またあの表情であたしを見た。
…好きなんて言ったらダメなんだ…
「あたしは…大和を忘れた事…なかったよ?」
「俺も…夕葵を…」
バタンッ
「先生、何してんの…」
大和がバッとあたしを離した。
あたしは声のする方へ顔を向けた。
「…涼太」
涼太は厳しい顔で、大和を、あたしを見る。
涼太はあたしの方へ歩いてくる。
あたしは涼太の茶色い目にとらえられていた。
「夕葵、行くぞ!」
涼太があたしの腕を掴む。
涼太の怒りが掴まれた腕からひしひしと伝わった。
大和はあたしたちを見て、何も言わずに部屋を出て行った。

