私の愛した人

背中にはえた黒い羽は小さくて、一本が完全に消えると羽自体も見えなくなった。

背筋がゾクッとする。

コレが私の寿命?

圭吾が私に付けたラストタイム?

何も信じられなくなった私の頭の中で、何かがガラガラと音を立てて崩れていく。

「桜?落ち着きなさい」

御冬さんが私の肩を抱く。

だが、私はその手を叩き落とした。

「落ち着けるわけないでしょ!?」

堪えていた感情が一気にあふれ出て、何の感情かもわからない。

涙がぼろぼろとこぼれてくる。

「落ち着きなさい。冷静になって」

御冬さんは私の顔を両手で包み込んだ。

そしてその手を払おうとする私を胸に押し込み、耳元でささやいた。

「今ここで、正気を失っていたら救える命も救えないわよ?」

その言葉に私はハッとする。



…圭吾。



私は何のためにこんな場所にいる?

圭吾を助けたいから。

わかってる。

わかってるけど全てを受け入れるのも難しい。

私はうつむき、地面を見つめる。

冷静になれ。

受け入れることはできなくても、彼のために演じることぐらいはできる。

彼を救うと決意した時に覚悟は決めた。

私は何があっても彼を信じる。




彼が“何者”でも。