私の愛した人

そのあと、おじいさんが神への祈りの言葉を唱えるからと私と圭吾は教会から出ることにした。

圭吾に案内されるままに教会の裏手に回ってきた。

丘の上にある教会の裏手にはあたり一面の菜の花畑が広がっていた。

「わぁー…きれーい…」

黄色の花畑の向こうには、湖が広がっていた。

「俺の家って町からは離れてるし、反対側は湖だからあまりここを知ってる人はいないんだよ」

私の隣に圭吾は座ってそういった。

「おかげで誰も来ないし、一人でのんびりできるけどな」

いたずらっ子みたいな笑みを浮かべて、私の手を引き座るように圭吾はうながした。

「でもそれじゃ教会も困るんじゃない?」

「ははっ!じいちゃんがいつもぼやいてるよ。赤字だぁって」

他人事のように笑う圭吾。

その笑顔は苦労をして苦しい生活をしてきたものではなく、幸せの中で生きてきたもののように感じた。

「あ、ねぇ。目、つむって?」

「いきなりなんで?」

「いいから!」

圭吾に目をおおわれ、私はおとなしく目をつむった。

すると、圭吾の細くてしっかりとした指が私の手に触れた。

薬指を何か冷たいものが滑っていく。

「もーいいよ?」

圭吾のあの無邪気な声が聞こえて私は目をあけた。