「…彼ね、すごくいい人なの。」 「ん?彼って、さっきのオカ…執事ですか?」 「違う。私の婚約者。」 琴未さんは気まずそうに俺から目を反らしながら言った。 「どんな人なんですか?」 「優しくてね、いつも笑顔なの。私を誰よりも大事にしてくれてるし。」 「まさか物足りないんじゃないでしょうね?」 「まさか。満足、万歳よ。」 「じゃあ何がつまんないんですか?」 「あら、ゆせ記憶力いいのね!」 本音を隠すみたいにふわふわした会話だな、と思った。