朱の蝶

さっきの女性といい
ここだけが別世界。

「チカ、紹介するから
 おいで」

『チカ、おいで』

「はい」

兄のように、私の名前を呼ぶ
弦の声にドキドキするなんて

おかしい、私の胸

間違えたらあかん

弦は、お兄ちゃんを殺した
男やねんから・・・

チカゲ

間違えたらあかんで

自分に何度も何度もそう言い
聞かせながら私は、弦の隣に
座った。

「この子が、さっき話した
 女の子

 名前は、チカ」