朱の蝶

玄関の鍵を閉める俺に
聞こえてくる声・・・

「確か、出所した息子さん
 だけが、今は住んで
 いるんでしょう?」

鍵を掛けたドアの前に佇む
俺の手を二つの小さな手が
触れる。

「ええ
 ユミちゃんの自殺の次は
 お兄ちゃんの警察沙汰

 セキガミさん戻りたくても
 もう、この街には住めない
 わね・・・」

そう話すのは、母と以前
仲良しだった隣のおばさん
の声。

立ち止まったままの俺の手は
グイグイ、引っ張られている

「ゲンちゃん、早く」

「早く」

「ああ」