朱の蝶

例の微妙にずれた飾りは
今日も健在。

久しぶりに見たら、妙に
落ち着く。

「ええ感じやん」

微笑む私に、聞こえる声

「何があった?」

『何があった?』

あの日と同じ声・・・

差し出される、大きな手

その手に触れ、見上げる私
に、愛しい貴方の姿が映る

「何、笑ってる?」

「何も・・・」

涙が溢れる瞳で、私は
貴方を見つめた。

貴方は、その場に
しゃがみ込み

私は、貴方の肩に腕を回して
必死にしがみ付く。

「千景、おかえり」

「アホ
 おかえりは、弦
 あんたの方やろう?」

「ただいま」