朱の蝶

「待てや

 奴は出所して
 組に戻ったんか?」

私の言葉に、曇る組員の顔。

「いえっ、それは・・・
 
 奴は、きれいさっぱり
 足を洗って、今は田舎に
 引っ込んでるそうです」

「堅気になった人間を
 あんた等は殺る言うんか?」

「しかし、二代目
 堅気になろうが、奴が
 先代を殺した事に変わりは
 無い」

「そうやな

 ほんなら、セキガミを
 殺せばいい

 でもな、それやったら
 刑務所におった、この十年の
 そいつの時間を、あんた等は
 どうしてやれる?」

黙り込む組員達・・・

「どうすることも
 できひんやろう・・・」