朱の蝶

「ゲンが戻ったよ」

祖母の声に、母は慌てて
俺の元に駆け寄り、俺を
華奢な体に抱き寄せた。

母の温もり・・・

「バカ息子、おかえり」

「ただいま」

母の病気の事はそれとなく
面会に来てくれた父から
聞いていた。

ものすごく明るい時
グーンと暗くなる時

その両面は、パチンと
スイッチを押すように
一瞬で入れ変わる。

今日の母は、ずっと
明るい・・

そんな母の傍で、ずっと
退屈がる事もなく母の話を
聞いている女性がいた。

「ゲン、お母さんの
 お友達のハルちゃん」

俺は、その言葉に
耳を疑った・・・