病院恋愛

行き先がわからないまま、車は進んでいく。


座らされているいかにも高級な革のシートが、落ち着かない…。


「…あの、降ろしてくだ」


「だ〜めっ♪」


「男の人が可愛く言ってもいい年は過ぎたと思います。…正直、キモいです。」


「……見かけによらず、辛辣なんだねぇ雪ちゃん。」


「無理矢理誘拐されたら誰だってそうなります。」


あ、無理矢理連れ去ること自体がまず誘拐か。


そう考えていると、


「別に誘拐はしてないよ?ちょっと一緒に遊ぼうと思っただけなんだけど。」


困ったように笑う隼人さん。


すぐさま私も言い返す。


「同意も得ずに、無理矢理はいけません。医療だって同じです。
いかに生命の危機だとしても、治療を拒否してしまえば私達は手を出せなくなる。それをいかに患者さんや家族に理解してもらってようやく医療を提供できる、って過程を踏んでいるのに。
…貴方のやってることはメチャクチャです。」


私は隼人さんをギロリと睨み付けた。