「いや、別に」

ふんっと満足げに私を見下ろした先輩。

「俺は資料の準備とかあるから、勇気がサボらないように、鍵受けとりに行きつつ、アイツをちゃんと連れて行くように!」

思わず、見惚れてしまう。

「返事は?」

「りょ、了解しました」

俯きがちに、答えたそのとき、

「また二人っきりだからって、イチャついてんなよ?」

先輩はかがんで、私の耳元に顔を近づけて言った。

パニックでおそらく赤面していた私の横で、同じく加奈もひゃーっと赤面し、さらに体育館中、女子の悲鳴も響き渡っていた。

颯太先輩はそんな女子たちにはまったくもって興味なさげに、見下したような視線を浴びせながら、去っていく。

その後の体育は女子たちの視線が痛く、私にとって非常にきまずい状況となったのでありました。