【慎也side】

 咲月と松田の話を盗み聞きしてしまった。

 咲月は、南大樹に告白された……。
 それで、咲月と南大樹は付き合うことになったらしい。

 だからといって、告白はする。
 気持ち伝えないと、スッキリしねぇし。

「咲月、ちょっと待って」

 咲月を呼びとめる。
 みんなが帰るのを待つ。
 
 俺と咲月しかいない、静かな教室になった。

「咲月、俺さ、咲月のこと……」
 言うんだ、俺。
 半年の間片思いしてたんだ。
 その気持ちを、今、ここで伝えるんだ、咲月に。
「咲月のことが好きだ」
 ふられるかもしれない。
 けど、そんなことは関係ない。
 咲月に自分の気持ちを伝えることが大事なんだ。
「ごめん、私……」
「南大樹と付き合ってるんだろ?」
 黙ってうなずく咲月。
「いいんだよ。ただ、俺の気持ちを咲月に伝えたかっただけなんだから」
 これで、俺の恋は終わった。
 これが、初めての恋であり、初めての失恋でもある。
「これからも、普通に俺と仲良くしてくれよな?」
「うん」
 俺は教室から出て行った。

 俺は、泣くことしかできなかった。
 帰ってる時も、ずっと泣いてた。
 自分の気持ちを伝えたんだ。
 これでいいんだ。