「うん」 
 ……第2ボタン?
 何だそれ。
「何すか、第2ボタンって」
 気になってしまい、ついしゃべってしまった。
「お前、第2ボタン知らねぇの?!」
 林原先輩が驚いて言う。
 第2ボタン知らないってまずい?
 みんな知ってるの?
 咲月は知ってるみたいだけど。
「ちょっと来い」
 林原先輩に人の少ないところに連れてこられる。
「第2ボタンっていうのはなぁ、男が好きな女にあげるんだよ。卒業する時にな」
 男が……好きな女に……。
 ってことは!!
「岡田先輩、咲月のことが好きってことですか?」
「それは違う。あいつ、今好きな人いねぇから」
 好きな人がいない?
「じゃあ、何で咲月に?」
「石橋さん、岡田のこと好きなんだって。岡田がそのこと知ったから……」
「それ、本当ですか!!?」
 咲月が岡田先輩のこと好きって……マジかよ……。
「お前、石橋さんのこと好きなんだな」
「え?」
「咲月って下の名前で呼んでるし」
「……あ……」
 俺は焦っていたからか、咲月のことを下の名前で呼んでいた。
「ごめん。今のは俺の言い方が悪かったな」
 どういうことだ?
「石橋さん、岡田のファンなんだよ」
 咲月が、岡田先輩の、ファン?
「だから、恋愛感情はないよ。安心しろ」
 そのことを聞いて、俺は肩の力が抜けた。
 何で、こんなに安心するんだろう。