「咲月!!」
 今は委員会が始まるちょっと前。
 島田に咲月と言われた。
 咲月はこっちを見ていない。
 ……よかった。
 咲月がこんなとこ見たら、困るよな。
 咲月は俺のこと好きじゃねぇんだし。
「だってホントにお似合いなんだもん」
 島田……ありがとな。
 そう言ってくれて。
 でも、咲月は俺のこと好きじゃない。
 俺は嬉しくて笑ってしまった。
 久しぶりに言われたから、嬉しくなった。

 咲月は本棚のところで読書している。
「石橋、ホントにとられるかもしんねぇぞ」
 真面目な顔で言う佐久間。
 佐久間に真面目な顔は似合わない。
 俺は笑ってしまった。
「もういいんだよ」
 咲月は俺のこと好きじゃない。
 それが分かったんだ。
 ふられたのと同じ。
「伝えてみなきゃ、わかんねぇぞ」
 伝える……か。
 伝えても、結果は分かってるんだ。
 それなら、伝えても伝えなくても同じ。
「伝えて後悔するのと、伝えないで後悔するのとでは、全く違うからな」
 伝えて後悔するのと、伝えないで後悔するのは、違う?
 どう違うんだよ。
 同じだろ。
 伝えた方が、楽になんのかな?
 
 右前には、咲月がいる。
 いつもこんなに近くにいるのに、咲月の気持ちが分かんない。
 人の気持ちなんて、分かる人いねぇよな。