「でも、何でだよ」
 俺がいいなんて……。
 勘違いしちゃう。
「だって、あの男子知らないもん」
 そういうことか……。
 知らない男子の後ろを歩くのはやだよな。

 突然、咲月が俺のジャージの袖の部分をつかんだ。
「どうした?」
「……揺れてる……」
 今にも消えそうな声で言う咲月。
 少し立ち止まった。
 確かに、揺れてる。
 結構大きい揺れだ。
「……怖いよ……」
 そう言って、今度は俺の腕をつかんだ。
「大丈夫だよ。……俺がついてるから」
 最後の一言はすごく勇気があったと思う。

 ここで、咲月と別れなければいけない。
「咲月、大丈夫か?」
 ただうなずく咲月。
「俺、送って行こうか?」
 咲月が心配だ。
「ううん。大丈夫」
 泣きながら言われても、説得力ねぇし。
「やっぱ、送ってくよ」
「でも、そしたら慎也が……」
「俺は大丈夫だから」
 ったく、そんなこと気にすんなよ。

「じゃあな」
「ありがと。気をつけてね」
 家について安心したのか、咲月は泣きやんだ。