【咲月side】
 
 冬休みが終わった。
 冬休みはあんまり楽しくなかった。
 熱は出すし、部活に行っても慎也とは話さないんだもん。
 部活の時は男子と女子でコート分けてるもんね。


 冬休みが終わって変わったこと。
 それは……私は松田真希と仲良くなった。
 真希は、意外に男っぽくて……。
「咲月、好きな人教えないと咲月の変な噂流すよ」
 こんなふうに脅してきたりする。
「秘密」
「いいのかな?変な噂流して」
 それはやだ。
 今は3年生のお別れ会の係別作業中なのに、こんなことしてていいの? 
 私は招待状。慎也は小道具。
「じゃあ、絶対に誰にも言わない?」
 私は「絶対に」を強調して言った。
「絶対に言わない」
 真希も「絶対に」を強調して言った。
「じゃあ、協力してくれる?」
 言ってほしくないのと、協力してくれることが、すごく大事だった。
 私は、真希の言葉を信じて、好きな人を言う事にした。
「……吉田……」
 小さい声で言った。
「えぇぇえぇぇ!!!」
 そんなに驚く!?
「どこが好きなの?」
 どこが好き?
 どこって言われても……。
 気付いたら慎也のこと好きになってたから、分かんないよ。
「秘密」
 恥ずかしくていえないよ。
 慎也って、意地悪だけど、ホントはすごく優しいんだよね。そんなとこが好きかな。