ただ、愛されたかった
 
貴方の瞳に入っていたかったの
 
 
   それだけなのに
 
 
朝日が窓から差してくる、睡眠から目が覚めて家の中は静寂が響き渡り居心地が悪い
 
秋は制服を着るとベッドから離れメモを書くとバックを持ち、重いドアを開けて現実へ戻っていった
 
「…今日…なんだっけ…」
 
バックから手帳を出せば予定を確認する様に指で柔らかく冷たい紙を撫でていく
予定を確認し終え視線を前に戻した瞬間
 
見慣れない黒の髪が
不思議でだけど惹かれる雰囲気の人物が
 
秋の横を通った
秋は始めての心を抑え切れず立ち竦み震える体を止める術を知らない
行ってしまう彼女を引き留めて話し掛けそうな自分を抑えるので必死だったせいか瞳から涙が溢れる、両手で涙を抑えればさっきの人物とは違う聞き慣れた声が秋の体を支えているのに気が付いた
 
 
「葉山、さん…?」
 
「どうしたの?秋ちゃん」
 
優しく声を掛けてくれる彼の声が彼自身があまりにも秋には痛くて
すがる様に抱き着きながら涙を耐えきれないまま鳴咽をあげる秋に、森久保はゆっくりと頭を撫でてくれた
 
「今は泣きなよ、ね?」
 

何回も秋は頷くと体を森久保に預けたまま始業ギリギリまで泣いた

そんな出来事で少し自己嫌悪に陥って、溜め息を漏らしながら長い廊下を歩く
中ばきで歩けばキュッキュッとあまり心地のよくない音が響いて
ふと視線を前に向ければ彼女がいた


話しかけれない、いきなり話し掛けて嫌われたくないから
と思っているうちに職員室に入っていってしまう
がっかりと項垂れて教室に戻ったが忘れられない

不思議に哀愁を帯びた彼女の表情や姿が忘れられなくて
ギュッと締め付けられた胸の痛みを押さえ歩いていった



続く