夕方、いつもは森に入るのを避ける時間だけど、今回は時間に関係なく森に足を踏み入れた。
絶対に会えると信じて、一歩一歩、確めるように、ゆっくり大木に向かって歩いた。
鳥のさえずりが聞こえる。
柔らかな風が枝や葉を優しく揺らし、温かな光が、森の中に降り注ぐ。
もうすぐで…智治に会える。
今度こそ会わせて…
歩きながら風に話しかけた。
「ふぅ…着いた…」
大木に夕陽が当たって光っている。
今朝も来た場所だけど、今回は森がアタシを待ってくれたように感じた。
「お願い、智治に会わせて」
目を閉じ、風を待つ。
すると、暖かな風がアタシの頬をかすめた。
『弥生…待ってたよ』
目を開けると光の中に智治がいた。
「智治…本当に?」
『そうだよ』
あの頃と変わらない笑顔で頷いていた。