(?)

なんだろう…

俺はふとその医師の表情が一瞬強ばったのを見た。

その表情からは何か決定的な物を掴んだかのようなそんな空気を感じた。

「それは大体いつ頃の話に…」

「それが私にもわかんないんだなぁ、これが…。」

言いながらマリアさんは困った表情でボリボリと頭を掻いた。

「そうですか…。」

そう言って、医師は肩を落とした。



その後、すっかり外が真っ暗闇になった頃、医師とマリアさんは例の部屋に行き色々と話していた。

俺は先輩の近くで先輩を見つめていた。

相変わらず静かに眠る先輩。

そんな先輩が半狂乱になっていた時の言葉を思い出す。

-違う、そんな物最初っから無い。無いの!?-

無い…何が無かったのだろうか?

いやそれ以前に元々あそこに何があったのか?

何もなかったあの空き部屋に、先輩がいた理由はなんだったのだろう。

-あの部屋は遠い昔に死者が出た部屋で…。-

マリアさんが言っていた事も思い出した。