でも先輩が心配なのは言わずもがなだ。

どちらにしろ、バイトに行けるような状況では無かったのは間違いないかもしれない。

今更ながらそんな事を思う。

そして今、マリアさんの部屋で静かな寝息をたてる先輩を囲む様に俺たちは座っていた。

「正直な事を言えば、不明な行動の原因はわかりません。ただ、これは憶測ですが…。この夏の暑さと高温の熱に当てられて、無意識にとった行動ではないかと。」

「無意識?無意識にあの部屋に入ったって事?」

マリアさんは何か府に落ちない表情をしていた。

まぁ、当たり前と言えば当たり前だろう。

あの部屋は飽くまでも空き部屋なのだから…

「そう言えば、あの部屋は何も無かったようですが…」

「あぁ、あの部屋は空き部屋なのよ。訳あって人が住まないんだけどね。」

「訳あり?」

「んまぁその…あの部屋は遠い昔に死者が出た部屋で…。」

「死者…。」

そこまで話して、その医師は考え込む様に先輩を見た。