Cold Phantom [後編]

「そうむくれないでよ。良い事じゃないの。それだけ愛されてるって事だし。」

「愛されてる、か。」

私はなんとも言えず無口になった。

「あれから8年くらいになるのかな。今でもよく憶えてるよ。お爺ちゃん好きだったからさ。」

「私がアパートに来る前だね。」

「そっ、今思えばもう8年かぁ。」

言いながらしみじみと話し始めた。

「私の爺ちゃんはいっつも馬鹿なばっかり言ってたけど、太っ腹でおおらかな人だったよ。」

「マリアさんによく似てるね。」

「…それは誉めてるのか貶してるのか解らないな。」

「勿論誉めてるよ。」

「本当に?まぁ、良いけどさ。」

そう言いながらもニヤニヤ顔のマリアさん。

「言葉の割ににやけてるよ。」

「まぁね、爺ちゃんみたいな人になりたいって思ってたからさ。似てるって言われて本当はちょっと嬉しかったんだよ。」

「尊敬してたんだ。」

「うん、とっても良い人だったよ。」

そう言って、マリアさんは帰り道の途中のドラッグストアで車を止めた。