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「補強工事?」

「うん、ちょっとね。」

それは突然にやってきた。

7月上旬の蒸し暑い夕暮れ時、私が学校から帰ってきたらアパート前に大家のマリアさんがいた。

何でも築何十年を過ぎているボロアパートなため、補強工事をする事になったらしく、それを伝えるためにアパート前に立っていたようだ。

そして二週間後にそれは迫っているとの事だった。

「そこで、このアパートに住んでいる人には少し部屋を空けて貰いたいなって思ってね。」

「それって私が部屋を使えなくなるって事じゃ?」

「そう言う事になるかなぁ…。」

「なるかなぁ…って、いきなりそんな事言われても。すぐには部屋なんて見つけられないし。」

「それは私が何とかするつもりだけど…正直(期待しないでね。)って感じの状態だから…。」

…最悪だ。

私はジト目でマリアさんを見つめると、私が伝えたい事が伝わったようだ。