Cold Phantom [後編]

「それもそうなんだけど、俺が言いたいのはそこじゃないんだ。」

「どう言うことッスか?」

「この窓から外を見てみろ。」

気姿月先輩が窓に親指を立てて見せた。

俺も先輩同様外を覗き込んだ。

外は相変わらず真っ暗だが、目が慣れた事と明るい月明かりからだろうか、鉄門までなら見ることが出来た。

「立派な庭と門ッスね。」

「庭と門゙だげな…それ以外はどうだ?」

「それ以外?」

言われて再び外を覗いた。

それ以外と言われても、それ以外は屋敷と森くらいしか見ることが出来なかった。

「特に何もないッスね。」

そう、何もなかった。
しかし先輩は話を続けた。

「何もない事が、不自然だと思わないか?」

「えっ?」

「ここまで、俺達はどうやって来たのか思い返してみろ。」

「えと、大きな道の外れの階段で……あっ!?」

俺は、その時気姿月先輩が言いたい事が解ってしまった。

とても基本的な事に気が付いていなかった。

「交通手段、って事ッスね。」

「そうだ、おかしいと思わないか。ここまで続く道路すら無かっただろ。」

「車なんかじゃ、とてもここまで来れないッスね。」

「そう、通行手段さえ途絶えてる屋敷なんて、幽霊以上に不気味だと思わないか?」

「確かに…」

言われて、頷く事しか出来なかった。

「それに、かつてはビーカーやら機械が散乱していたって聞くじゃないか。富豪が住んでいたと言うより…」

「科学者…」

そう呟いて、身震いした。

まだ交通手段があるならば、高名な科学者が住んでいたと解釈も出来たが、隔絶された屋敷に科学者がいた痕跡。

かなり怪しげな場所であるのは間違い無さそうだ。