笑う夜の闇【短篇集2】


―急にひどい雨ですね…

そう言いながら見上げる彼に、

―ありがとう…

と、彼女は微笑んだ

雨と地面の匂いにまぎれ、彼の上着から僅かな煙草の匂いがした

彼もまた、彼女が落とした映画のタイトルを見ていた

―何だかやみそうにないですね

―傘がいるなんて思わないもの

二人の共通の話題…

彼が彼女の好きな食べ物を…

彼女が彼の吸う煙草の銘柄を…

それぞれが知るのはまだ先だ