笑う夜の闇【短篇集2】

実家にしばらく滞在しながら、新しいマンションを借りた

初めての夜の帰宅は、やっぱり胸が寂しさで溢れていた

灰皿のない部屋…

煙草の嫌な匂いも生活の一部だったんだと振り返る

私は煙草は吸わない
何が美味しいんだろうと、少し真似てみた

大きく吸い込んだ空気にもちろん味はない
吐き出す空気は…ただの溜め息でしかない

何も持たずに唇に当てた二本の指で、頬を伝う涙を拭いた

二人で歩いていたつもりの道
今は一人になっただけだ

空いた片側を共に歩いてくれる、同じ価値観で手を取り合う人を、見つける事が出来るだろうか…

叶わない、切り取った未来と一緒に、この日携帯から彼のメモリーを消した