ぼんやりと考えていた

何も手に付かないのだけれど、煙草にだけは度々手を伸ばす

無意識に吸う煙草…
旨い訳がない

気付くと、灰皿には何本もの吸い殻が溢れている
灰皿を眺めていて思う

―吸い殻の長さが全部違うんだな…

同じ煙草を同じ無意識の俺が吸っている
なのに、消された吸い殻はどれもまちまちな長さ…

そう…気分の問題だ
理由なんかない…単なる気分

煙草の吸う長さだって変わる
単に気分がいつもより、ほんの少し悪かっただけだ

でも彼女は出て行ってしまった
いつもの喧嘩とばかり思っていたが、今回は違うようだ

何年も時を過ごし、いずれは一緒になるものだとばかり思っていた

いや、今もまだ少し期待を残している自分…だからぼんやり落ち込んだ振りが出来るのかも

愛情を過信していた?
いいじゃないか…

穏やかな日常に、振り返れば優しい幸せを感じる事が出来れば

気分が悪い日もある
今はその理由すら忘れてしまった

携帯が小刻みに揺れた…
マナーモードの振動にすら、一瞬驚いてディスプレイを見た

彼女だ――
いつもの口調で、そろそろ帰ろうかな…と言う言葉を期待して

親指は着信ボタンを押し、俺は目を閉じた…