「行くぞ」 伸也さんの言葉に腹が立つ。 私は貸し借りされるような“物”じゃない。 「おい。聞こえてんのか?」 あんたの“物”なんかじゃない。 「行くぞって」 「あんたのものじゃない」 「えっ?」 カズが驚いた声を出した。 「あぁ、悪い。そういう意味じゃねぇ」 「じゃあなに?」 「話があるから来てくれ」 「わかった。カズまたね」 「う、うん」 カズはポカーンと口を開けたまま、私たちを見送ってくれた。