猛は馴れた手つきでオートロックを解除して、エレベーターに乗る。
高層マンションに緊張しながら、私もその後に続く。
12階でエレベーターは止まった。
「色んな奴らがいるけど、みんな仲間だから」
「うん」
仲間……猛は“友達”とは言わずに“仲間”と言った。
扉を開いた途端に、耳をふさぎたくなるくらいの大音量の音楽が聞こえる。
「お前ら、うるさくしすぎ」
猛は大きな声で、中に呼びかけているけど、この音じゃ聞こえるはずもない。
「亜美ちゃん、入って」
「うん」
居間らしきところに繋がるドアを開けると「猛おせぇ」だの、「猛ぅ~」だのといった声が聞こえる。
なんだか帰りたくなってきた。
「カズ、音小さくしろ」
「はーい」
「亜美ちゃんおいで」
帰りたいと思いながらも、私は猛に手招きされて部屋の中へと足を進めた。


