「まずはアイツだ」
涙が乾き、落ち着きを取り戻すと、伸也さんは突然そう言って立ち上がり、私を部屋に残したまま外へ出て行った。
「猛、来い」
伸也さんは扉の向こうにいるはずなのに、ハッキリと聞こえるくらいの怒鳴り声。
怒鳴り終えると、すぐ部屋に戻ってきた。
「猛がどうかした?」
「すぐに来る」
伸也さんが怒鳴ってから1分もたたないうちに、真っ青な顔をした猛が扉を開けた。
「お待たせしました」
「おう。座れ」
「はい」
いつものように能天気な猛とは違い、なんだかビクビクしている。
「お前学校行ってるか?」
「はい」
「コイツが行ってることは知ってるか?」
伸也さんは親指を出して、隣に座る私を指差した。
「はい」


