大音量の店内で、消えそうに小さな私の声は、伸也さんの耳には届いたらしい。 「おい、離すな!」 そう怒鳴られたけど、手に力が入らないの。 自分の体なのに、自分の意志で動かない。 「触るぞ」と伸也さんは叫んだ後、私の手を力強く掴んだ。 「具合悪いのか?」 もう伸也さんの声も遠くに感じる。 「おい、亜美」 私の名前覚えてたんだ。 怒鳴り声とは裏腹に温かくて優しい手。 やっぱり、伸也さんは怖い人なんかじゃない。