「冗談だ」って声が聞こえたから、伸也さんのほうに体を向けたけど、伸也さんの姿はもうなかった。 「言い逃げか。これ着よう」 今日はいつもより可愛い格好をしたい気分。 まだ伸也さんは着替えてないから少しお化粧もした。 「用意できたよ」 「今日はきちんとしてるんだな」 「たまにはね」 「俺も着替えるか」 伸也さんはいつ買っているのかわからないけど、新品のスーツに袖を通す。 スーツを着た伸也さんは物凄く大人な感じがして、私の子供っぽさが釣り合わないようで少し憂鬱になる。