「亜美、行けるか?」 「うん」 伸也さんの表情はいつものように優しくなっていて、私の手から感じ取れる温もりが少しだけ気を紛らわしてくれた。 ピンポーン 「はい」 ガラガラ声の男の人。 「お電話いただいた者です」 「どーぞ」 チャイムを鳴らせば、エプロン姿のたまさんがいつも出迎えてくれたのに… 今は人影すらない、庭を歩く。