「いいから立て」
そう言って、腕を捕まれた瞬間、私の中の何かが弾けた。
「触らないで!!」
私の声があまりにも大きくて、伸也さんは驚いて手を離した。
「なんなんだよ。お前」
「ほっといてください。伸也さんには、迷惑かけませんから」
「明日も来るのか?」
「たぶん」
「何時に?」
「今日と同じくらいだと思います」
「今日は何時に来た?」
「日が落ちてから」
何時に来たかなんて覚えていない。
でも、私が来たときには綺麗なネオンが私を照らしてくれていたから、そんな答え方をした。
「わかった」
そう言って、伸也さんは立ち去っていった。
変な人。
でも、私には猛が、言っていたような怖い人には見えない。
だって、伸也さんは目の奥が綺麗だから。


