眠らない街は、今日も沢山の人と、沢山のネオンで溢れかえっていた。
居酒屋の前に座り込み、通りすがる人たちをただ見ている。
「お前、来るなって言っただろうが」
聞き覚えのある声が人ごみの中から聞こえてきた。
「あっ、伸也さん」
「猛と来たのか?」
「いいえ。一人です」
「バカか!またヤラれたいのか?」
「どうなんでしょう?」
「ふざけんなよ」
「ふざけてませんよ」
「何でここに居る?」
伸也さんの声がいきなり低くなった。
ずっと怒鳴ってはいたけど、それまでとは明らかに違う声。
「わかりません。来たくなっただけです」
「帰れ」
「どうしてですか?」
「迷惑だからだ」
「伸也さんには、迷惑かけません」


