アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女



こうして私は変わっていった。



勉強することもやめて、水泳にも殆ど行っていない。

恭達と夜遅くまで遊び歩く毎日。



沢山の友達が出来て、彼氏がいて、ママと恋人の家にいるよりずっとずっと楽しかった。



でも 水泳だけは何故かやめられない。



練習に行ってはいないけど、行きたい気持ちもあった。



泳ぐことが好きだったから。



心の中に沢山の変化はあったけど、きっとこの気持ちだけは変わらない。



そのことに気づくまでに時間はかかったけど、気づけてよかった。



だって、最近では自分でもわからない心の中。



その中でも唯一、真実の気持ちだったから。



水泳をしたい。



純粋にそう思える気持ちが、嬉しくてたまらなかった。



今更、何しに来たってコーチには怒鳴られるかもしれないけど、もう一度あの場所へ戻ろう。



今みたいな生活は出来なくなるけど、自分の思いを大切にしてあげたい。



私は早速通っていたスクールのコーチに連絡を取り、もう一度やりたいと強い意志を伝えた。




案外すんなりとOKしてくれたコーチ。




もう一度受け入れてくれたことに、すごく興奮していたけど、お金を払って通うんだからダメと言わないのは、今考えれば当たり前なこと。



それでも、嬉しくて、恭にこの気持ちをすぐに伝えたくて連絡をした。



「いつもの場所にいるから来い。」と言われ興奮したまま家を出た。



眠らない街と呼ばれる繁華街は毎晩大勢の人が集まっている。


学生やサラリーマン、沢山の人たちが眠らない街に吸い込まれていく。



そこの一角に恭達がいつも出入りしている、カラオケ店がある。



歌を歌うわけじゃないけど、いつもそこに集まっていた。



地下鉄に乗り、恭が待つ場所へと走る。



そして、恭の待つ場所へと着いた。



が、恭の姿がない。