伸也さんは、私の家族のことを何も知らない。 だから、私はパパの姓のままでいようと思う。 色んな人に説明するのも面倒くさいし、このままでいい。 あの男とパパなら、やっぱりパパのほうがマシかもなんて思ってしまうし。 次の日、私はママにパパの姓を名乗ると電話をした。 少し嬉しそうなママの声に、またカミソリの感触が恋しくなる。 私の安定剤は伸也さんの温もりから、カミソリへと変わっていった。 人は裏切るけれど、カミソリは裏切らない。 いつだって、私の気持ちを満たしてくれる。