アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女



お昼休みは4人で、机を合わせて座る。



食べている間は会話はあったのに、食べ終わると無言で一斉に化粧直し。



「亜美は?化粧しないの?」



「したことない」



「中学生になったらしなきゃ」



「うん……」




なんだか私だけ遅れた感じで恥ずかしい。



真っ直ぐにみんなを見れずに机を見つめていると、ユウコがポーチを片付け、話題を変えてくれた。



「亜美、部活は?」



「学校ではやらないけど、水泳やってる」



「へぇ。ユウコと直はテニス部」



「そうなんだ!いつからやってるの?」



「小5からだよ」



ユウコのお陰で気持ちが軽くなった私は、視線を上げて部活の話に食らい付く。


「私は3才から」



「すげぇ。今度直にも教えて」



「いいよ、いいよ!」



麻菜ちゃんは部活をしていないらしく、少し不機嫌になっていた。



けど、この時の私は麻菜ちゃんの気持ちを考えてあげれるほどの余裕なんかなくて、新参者である自分の立場を守ることで精一杯。



「麻菜はぁ、暇だからようちゃんのとこ行く」



麻菜ちゃんは横目で私を見ながら立ち上がった。



「ようちゃん?」



「麻菜の彼氏」



「麻菜ちゃん彼氏いるんだぁ」


「ずっとラブラブ」


偶然だけど、麻菜ちゃんのしたい話題に乗っかった私を見て満足気な麻菜ちゃん。



なんだかみんなすごいな。


お化粧に彼氏。



私も化粧しないと不味いかな?



これが女同士の友達作りの大変なところ。




仲がいいという証に、同じ物を持って同じことをする。



そんなことに意味があるとは思えないけど、仲間はずれにされたくなかったら、ある程度は合わせなくちゃいけない。



まだ化粧になんて何の興味もない。



だからできることなら、したくはないけど。