【完】TEARS−ティアーズ−



「今日もはじめの方、元気なかっただろ?
体調よくなかったのか?」



え?

はじめの方って、会った時くらいの事かな?


キョトンとした顔で郁君を見上げると



「あ、別にっ。そんなんじゃなくて…」



って、急に焦り出した。


実は昨日の夜、緊張しちゃって寝付けなかったんだよね。

南ちゃんが居るとはいえ、学校の男の子と遊ぶなんて初めてだったし。

そのせいで起きたのはお昼前で。

待ち合わせ時間ギリギリだったし。

半分くらい頭が寝てる状態だったかも(笑)



「心配してくれてたんだ、ありがとう。
郁君って優しい……」



“ね”って言おうと思ったのに。

あたしの声に重なるように、



「別に見てねぇよ」



なんて冷たく言い返されてしまった。


あたしが掴んだままだった腕も払われて。

そんな態度に胸の奥が


--チクンッ


って小さな音を立てた気がした。



「あ、悪ぃ」



その言葉に、今度はゆっくりと頭を左右に振った。



「あー、こんなだから俺ダメなんだろなぁ」



ボソッと呟いた郁君。