【完】TEARS−ティアーズ−




薄暗くなってきた道を1人で歩くのは、確かに不安だし、寂しいんだけど。

まさか郁君と一緒に帰る事になるなんて思ってもみなかった。


それに郁君は、さっきから全然喋らない。

それは、あたしもなんだけど。


何喋ればいいのかわかんないし。

そもそも、あたしが知ってる郁君のことなんて少ないんだもん。


サッカー部で。
綺麗な彼女さんがいて。
正宗君とお友達。

それくらい。


そんな事くらいしか知らないのに、話をしろって方が無理だよねぇ。


それは郁君も同じだから、何も喋らないんじゃなくて、喋れないのかなぁ……。


んー、良い方に考えすぎ?

本当は、あたしと帰るのが嫌だった……こっちの方が当たってるかも。


こういう時って、どうしたらいいんだろう。



「……はぁ」

「疲れた?」



思わずついた溜息に気付いた郁君が、立ち止まった。



「う、ううん。大丈夫!」



首を勢いよく左右に振った。