「正宗君、本当に1人で大丈夫だから……」
「えー? なに乃亜ちゃん。俺が送って行くの嫌なの?」
「そ、そういう訳じゃなくてね。
えっと……1人で帰れるし……」
「ダメだよ、危ないよ!
もう暗くなってきてるし」
「そうなんだけど……」
「ね? だから俺が送って行くよ!」
正宗君は嫌いじゃない。
凄く優しくて。
“日替わり弁当”の食券もくれた天使みたいな人。
だけど、こういう強引なのはちょっと苦手で……。
「おい、正宗。
篠原が困ってるからやめれ」
えっ?
後ろから聞こえた声は郁君の声で。
「えー? 乃亜ちゃん困ってたの?」
「え……あー」
あたしが困ってるって気付いて助けてくれたの?
助けてくれたのは嬉しい。
嬉しいんだけど。
だけど、かえって返答に困ってしまう。
だって、困ってるって素直に認めちゃったら正宗君に悪いし。

