【完】TEARS−ティアーズ−



「正宗君、本当に1人で大丈夫だから……」

「えー? なに乃亜ちゃん。俺が送って行くの嫌なの?」

「そ、そういう訳じゃなくてね。
えっと……1人で帰れるし……」

「ダメだよ、危ないよ!
もう暗くなってきてるし」

「そうなんだけど……」

「ね? だから俺が送って行くよ!」



正宗君は嫌いじゃない。

凄く優しくて。

“日替わり弁当”の食券もくれた天使みたいな人。


だけど、こういう強引なのはちょっと苦手で……。



「おい、正宗。
篠原が困ってるからやめれ」



えっ?

後ろから聞こえた声は郁君の声で。



「えー? 乃亜ちゃん困ってたの?」

「え……あー」



あたしが困ってるって気付いて助けてくれたの?

助けてくれたのは嬉しい。

嬉しいんだけど。


だけど、かえって返答に困ってしまう。


だって、困ってるって素直に認めちゃったら正宗君に悪いし。