【完】TEARS−ティアーズ−



それなのに郁君は不機嫌そうな顔になって。

口を手でおおい、そっぽ向いてしまった。



あ、れ? 怒っちゃったのかなぁ。



この歳になって、風船なんて貰ったから?

それとも、あたしまた何かしちゃったかなぁ?



不安になって郁君を見上げたままでいると、郁君の肩が微かに揺れているのに気付いた。



「……郁君?」

「ウサギ、絶対に怒ってただろー」



そう、あたしを見る郁君は笑ってて。


あれ?

怒ってたんじゃなくて……笑ってたの?



その笑顔につられて、あたしも笑ってみた。