【完】TEARS−ティアーズ−



「かわいー」

「……キモ」



あたしが言ったと同時くらいに、郁君の声が重なって。

お互い顔を見合った。



「えー! 可愛いよ」



青い目のピンクのウサギは、可愛いのに。



「中は、ただのオッサンだろ」



なんて、子供達の夢を壊す郁君。

ぷぅっと膨れるあたしに、



「だって、よく見てみろよ。このウサギ薄汚なくね?」

「あ。た、確かに……」



よく見るとピンクの着ぐるみは、ところどころ茶色くて。

薄汚い。その言葉が当てはまる気がする……。



「でも顔は可愛いよ?」

「ちゃんと目見ろよ。なんかギラギラしてるって」

「え? あ……」



そう言われれば……ちょっと、変かも。



「ここの遊園地、儲かってないんじゃね?
だから着ぐるみをクリーニングする金ケチッてんだろなぁ」



そう言われて、妙に納得してしまった。

土曜日なのに混んでるアトラクションはないし。

人だって少ない。