「はい」
耳に当てた携帯から聞こえたのは、南さんの声。
《あ、高峰さん?》
「ああ、南さん」
《今日はもう終わったの?》
「はい、今から帰るところです」
《そっか。……さっきは、ごめんね?》
南さんは不安そうな声を出す。
「いえ、気にしないで下さいね」
《うん……。高峰さん、この後って用事ある?》
「ないんですよ」
《じゃあ、この後遊びに行かない?》
今度は少し弾んだ声で。
「あー……すみません。
今日はちょっと家で休もうかと思いまして」
せっかく誘ってくれているのに、断るのは申し訳ないけど。
さすがに今日は無理だと思った。
《あ、やっぱり体調悪かったの?》
そう焦る声を出した南さん。
「いえ、少し寝不足なだけですよ」
《大丈夫? あったかくして寝てね? ってお医者さんに言うのも変か》
「ははっ、ありがとうございます。また今度遊びましょうね」
《う、ん。じゃあね》
南さんは、とても優しい女性。
『乃亜ちゃんに振られてしまいました』
なんて、いくら辛かったとはいえ年下の南さんに、そんな事を言ってしまった僕に。
『かっこわるいなんて、私は思わないけど』
『失恋したときは遊んで忘れるのがいいよっ』
そう言ってくれた。
今では、こんな歳の離れた僕を誘ってくれる仲の良い友達。

